インタビュー後編:柿澤剛之さん(柔術家)〜ダイヤモンドガードの進化

自分らしく懸命に生きている人たちにフォーカスしたインタビューコンテンツ「My Best Of My Life」第4回のゲストで、柔術家の柿澤剛之選手の続編です。今回は過去の強豪選手との試合のことや、ご自身の近況について語っていただきました。

※この記事はインタビュー後編です。前編はこちら

プロフィール

柿澤 剛之

かきざわ よしのぶ

1977年生まれ。柔術黒帯。柔道整復師を経て現在、Relaxin'BJJ代表。

主な戦績


・アジアオープン選手権 黒帯 優勝(2008年)
・リオデジャネイロインターナショナルオープン黒帯ライト級3位(2010年)
・柔術新聞杯黒帯ライト級 優勝(2016年)
・ボストンサマーインターナショナルオープン黒帯ライト級3位(2017年)
・柔術新聞杯黒帯ライト級 準優勝(2017年)

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試合のこと

ディフェンスすることが得意なので、まず守りから入って相手の特徴や攻撃パターンを探って、攻めどころを探しながら徐々に攻めることを選択することが多いですね。そして、今でもアダルト(18〜29歳の年齢カテゴリー)で試合に出てます。

コブリンヤ選手との試合

2011年のWPJJCでエントリーしてなかったはずの世界王者コブリンヤ(フーベンス・シャーレス)が急に1回戦の相手になって、アクシスの渡辺孝真先生が「柿澤さん、相手コブリンヤだよ!」と教えてくれて、なに冗談言ってるんだよと思ってトーナメント表を見にいったら本当で、「これは殺されるかもしれない・・・」と思ったのですがやるしかないと。

コブリンヤはグリップがすごく強くて、道着を着てるのに滑ってくるようなパスガードをしてくる人で、グリップだけガチッと掴まれて切ろうと思っても切れないんですよ。だから持たせたままガードして、どっかでチャンスを見つけようという作戦に変えました。そしたらヌルヌルヌルっとすり抜けてくるような感じで不思議な選手でした。試合はダブルガードから相手が先に立ったという謎判定でアドバンを取られてしまい、終盤攻めに出たら間合いを半歩遠くされて逃げ切られてしまいました。

コブリンヤ選手とは、わずか5年で世界チャンピオンに登りつめ、その後も数々の大会で優勝し続けた柔術世界王者。IBJJF世界柔術選手権(ムンジアル)5回、IBJJFノーギ世界選手権4回、ADCC(グラップリング)も3回優勝するというとてつもない戦績の選手です。

引用元:BJJチャンネル 日本語吹き替え付 フーベンス“コブリンヤ”シャーレス コブリンヤ BJJ DVD3枚セット

タンキーニョ選手との試合

タンキーニョこと、アウグスト・メンデス選手のことは全く知らなかったので、ただ小太りな感じで強そうには見えなかったのですが、ラッソーガードのスイープが巧くて僅差で負けてしまい「こんな弱そうな人に負けてしまった・・・」というのが試合後の率直な印象でした(笑)

タンキーニョ選手はムンジアルとワールドプロの両世界大会を制していて、ノーギでもワールドノーギで優勝、ADCCでも3位入賞しているトップファイターです。

引用元:ブラジルブログ【セミナー】アウグスト"タンキーニョ"、初来日&セミナー開催

マイケル・ランギ選手との試合

2013年のパン・アメリカン選手権で対戦。得意技をちゃんと研究してなかったのでパスのアドバンテージを与えてしまいました。知ってればポイントは防げた試合だったかな。。。

ホベルト・サトシ・ソウザ選手との試合

RIZINで活躍中のホベルト・サトシ・ソウザ選手とは2011年の全日本選手権 アダルト黒帯で対戦。両引き込みになって上を選択したのですが、サトシはタックルが巧くて、片足タックルで一気にテイクダウンされて、そこからはパスを凌ぐ展開に。1回パスされそうになってアドバンテージを取られて、その後は足関節技を狙ってきたので事前に回転しながらエスケープしていたら、エスケープするたびに相手にアドバンテージがついて、結局アドバン差で負けました。

ジョナサン・トーレス選手との試合

ジョナサン・トーレスは力が強くて、しっかり密着する担ぎパスガードが得意な選手なのですが、10分間ずっとプレッシャーをかけてきて相手がミスしたらパスするという戦略のようでした。しかし、私がミスをしなかったので上からアキレス腱固めを取りにきたので立ち上がろうとしたら、逆に相手に立たれてアドバンテージを取られ、その後もずっと同じ展開が続いて負けてしまいました。あのベースキープの強さはどうすることもできず、守るので精一杯でした。

中村大輔選手との試合

ダイスケさんはパスのアタックが途切れず苦しかったです。 あまりにもスタミナが豊富であることを把握してからは終盤勝負に持ち込むつもりでしたが、中盤以降も動きがほとんど落ちてこないので我慢する展開でした。残り時間が少なくなって、漸くほんの少し動きにブレが出てきたので攻め込みました。苦しい試合でした。

全日本チャンピオンであり、国内の大会では圧倒的な存在だった中村大輔選手との初対戦で勝利

柔術新聞 岩井英治さんの感想

ダイヤモンドガードのDVD撮影で受けを担当して、何度か一緒に練習もさせていただいたのですが、足がもう丸太のようで、超えても超えても足が戻ってきて地獄でした(笑)当時の私は紫帯でしたが、茶帯になった現在も全くパスできるイメージが湧かないです。

あと、JBJJF(日本ブラジリアン柔術連盟)で殿堂入りしていて、のちにワールドマスターでも優勝した中村大輔選手に勝った2012年のデラヒーバカップの試合はすごかった。あの中村選手が負けて悔しがる姿がとても印象的でした。

毛利部さんとの出会い

YouTubeで活躍中の「しんすけ先生」こと、毛利部慎佑さんとの出会いは彼が紫帯の頃です。お正月に一緒に練習をしたのですが、「とても強くて恐い選手」というのが第一印象です。人柄については真面目で礼儀正しい人というイメージでした。

その年の終わり頃に、気が向いてリバーサルジム川口リディプスへ出稽古でお邪魔させていただいた際にスイープやパスをされて、「こんな強い人と定期的に練習させてもらえたら僕もまだ実力を伸ばすことができるかもしれない」と思い、代表の小野瀬龍也さんにお願いして毎週マンツーマンで稽古をつけてもらいに行ってました。

毛利部さんと柿澤さんのガチスパー

数年来の仲になりますが、性格は基本的に言葉が厳しいのですが非常に優しい部分があって、正直でずるいところがないので試合はご本人にとって苦しいのだろうなと思っていました。最近は吹っ切れて伸び伸び試合に向かっていけるようになったそうなので、もう心配はしていません。毛利部さんらしくやって欲しいですね。

そんな毛利部さん、2018年4月にさいたま市北浦和の緑区に「ジャンプファイトクラブ」という会員制ブラジリアン柔術ジムをオープンしました。

ジムをオープンしてから

Relaxin'BJJの皆さんと、埼玉ポーズで記念撮影

2019年3月に地元の埼玉県熊谷市にリラクシンをオープンしました。名前の由来は、柔術新聞の岩井さんに相談してジムにいらっしゃる皆様が肩の力を抜いてゆったり柔術を楽しんでいただけるような名前を考えていただきました。マイルスデイビスのアルバム名から取っています。オープンして1年になりますが、会員さんのレベルは確実に上がっています。雰囲気はとても良いですよ。

今後どのような事をやっていきたいですか?

会員さんと楽しくコミュニケーションを取りながら、更に育成してレベルアップしていただきたいです。いずれはキッズクラスも増やしてみようかなと思っています。それから、プライベートレッスンも大歓迎です。

自分自身の強みはどこにあると思いますか?

人間的には不真面目なところだと思います。選手としては身体の柔軟性と技術への好奇心です。

大切にしていることはなんですか?

練習においては同じことを繰り返すことです。

好きな言葉や座右の銘があれば教えてください。

好きな言葉

1クールのレギュラーより1回の伝説

江頭2:50

ほかにも「骨法」のおもしろさについて詳しく教えていただいたのですが、残念ながら今回は割愛・・・(笑)

柔術ビギナーの方へメッセージ

最後に、ブラジリアン柔術をはじめたばかりのビギナーの方々へのメッセージをいただきました。

何かと思い通りにならない段階だと思いますが、辛抱してやられることも悔しい気持ちと共に楽しんでいただければと思います。皆最初は白帯です。黒帯とは辞めなかった白帯という有名な言葉もありますが、全くその通りだと思います。僕よりセンスのある人はゴロゴロいましたが99.9パーセント辞めてしまいましたね。事情は各々あるとは思いますが、もったいないですね。

柿澤 剛之

まとめ

私もダイヤモンドガードのDVD持ってます

初対面にもかかわらずとてもフレンドリーに接していただき、色々なことを教わることができて本当に嬉しかったです。インタビュー終了後にRelaxin'BJJさんの練習にも参加させていただきましたが、名前の通り、すごくリラックスした雰囲気のジムです。

Relaxin'BJJにはみんなで同じことをする「練習クラス」のようなものがなくて、楽しく談笑しながら開始時間になると柿澤さんから会員さんたちに声をかけて今日やることを決め、それが終わったらスパーリングという流れ。仲の良い柔術好きのサークルのような雰囲気ながら、柿澤さんの優しくて丁寧な指導が印象的でした。また出稽古で伺いたいなと思っています。


※この記事はインタビュー後編です。前編はこちら!

取材スタッフ

TUNETOMO 取材・文/イラスト

柔術紫帯。柔道黒帯。上級ウェブ解析士。デジタルマーケティングによるWeb戦略提案とUI/UXディレクションが専門分野。柔術とイラストレーションと洋服が好きすぎて、オリジナルのアパレルSHOPまで作ってしまった。