ブラジリアン柔術の茶帯になる条件とカリキュラム(前編)
ブラジリアン柔術の茶帯とは、黒帯の1歩手前の段階。ほぼ黒帯に匹敵するような実力者です。
そんな茶帯への昇帯は、柔術界隈に「万年 紫帯」という言葉があるくらいの超難関ですが、その基準は道場によって異なります。道場によってはある程度の実力がついたら早めに昇帯させるところもあれば、昇帯の基準が厳しくて試合で優勝する実力があってもなかなか帯が上がらないところもあったりします。
いったい茶帯とは、どのくらいの実力が必要なのでしょうか。
茶帯としての必要条件とカリキュラム
BJJ WORLDの編集長でありINFINITY BJJ SPLITのヘッドコーチでもあるディノ・モスカテロさん(黒帯)の「BJJ Brown Belt Requirements And Curriculum(茶帯としての必要条件とカリキュラム)」という記事が興味深かったので、分かりやすい日本語に翻訳しながら要点をまとめました。
以下、翻訳まとめ記事です。
※翻訳記事の掲載許可取得済み
茶帯の条件はかなり厄介
ブラジリアン柔術の茶帯と認めるための条件はかなり厄介です。紫帯とは柔術のあらゆることを練習で試すことができる段階。つまり、テクニックに関しては以前の帯の条件ほど単純明快ではありません。
紫帯では技のコンビネーションや連携・反復などを織りまぜた練習をしますが、茶帯とは、それらを効果的に使いこなすレベルにあります。その際に必要となるのは、考え方や柔術への理解です。自分の知っているテクニックについて、コンセプトを調べたり理解をより深める必要があります。
さらに、茶帯はテクニックの指導を始める時期でもあり、良い指導者は紫帯の時点ですでにその準備をしています。
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今回の記事は紫帯としての必要条件とカリキュラムの続編です。こちらもぜひお読みください。
茶帯としての必要条件とは
茶帯で重要なのはバランスです。紫帯の頃に学んだ複雑なガードゲームに加えて、茶帯にはトップゲームも必要です。それに加えて、極めのマインドは紫帯のうちに身につけておくべきです。また、紫帯はエスケープとディフェンスの様々な方法を学ぶべき時期でもあります。
柔術の基礎のいくつかを学び直して完全に理解しながら、自分の個性を反映したゲームを洗練させていきます。
1. ムーブ
紫帯はハチドリに近いです。あちこちで回転し、ジャンプし、飛んで、倒立して、あらゆるところから極めを狙います。柔術における実験は、ほとんどこの時期におこなわれます。茶帯になるために重要なのは、最終的に実験を終えたとき、どのムーブが自分に有利に働くかを把握することです。
ムーブの面で茶帯に求められるのは、効率の良さです。成熟した紫帯になると、より少ない動きでより多くのことができるようになります。
ムーブを理解し、それがどのように機能するかを理解し、可能な限り全てを単純化することです。紫帯で取り組んできたことと正反対に聞こえるかもしれませんが、 いずれこの「単純化」が効率的である理由が分かるでしょう。
2. ボトムゲーム
紫帯であれば、とんでもない量のガードのバリエーションを持っているでしょう。しかし、バリエーションをたくさん持っていることと、自分に本当にあったガードを試合で選択できることは別次元です。
ガードからの距離を把握して、距離が変わったときにどのガードを使うかを選択できるようになれば、茶帯のレベルに近づいています。
また、単発の技でなく、複雑なコンビネーションやループ攻撃を備えている必要もあります。
クローズドガード
茶帯のクローズドガードは、とてもシンプルだけど対処をするのは難しいです。相手の動きを封じ、最も効果的でありながらシンプルなグリップを使い、相手に気づかれずにコントロールすることを心得ているからです。
- ラペルを使ったクローズドガード
- ラバーガード
- オクトパスガード
クローズドガードからの攻撃
クローズドガードからの攻撃は、コントロールと優位性のキープが大切です。茶帯を目指すのであれば、茶帯や黒帯を相手にしたときの成功率を測る必要があります。ラバーガードのような攻撃力の高いクローズドガードを使うことも有効です。さらに、スイープやサブミッションでの素早い奇襲攻撃も必要です。
- リバース・マッスル・スイープ
- サブミッションの連続攻撃
- ラバーガードからの攻撃
- 素早い奇襲攻撃
オープンガード
茶帯に必要なのは、全てのオープンガードがどのように機能するかを理解することです。シントゥシン、シングルレッグXガード、ワームガード、ラペルガードなどを学ぶことは、茶帯にとって不可欠な知識を理解するための基礎となります。
- シントゥシンガード
- ラッソーガード
- ワームガード
- ラペルガード
- ガードの組み合わせ
オープンガードの攻撃
紫帯の試合では、オープンガードの攻撃をうまく融合させることが大切です。
バタフライガードは攻撃の要であり、足関節やフロントヘッドロックなども多用します。さまざまなガードのバリエーションから多彩なサブミッションへのエントリー機会を作り出し、必要最小限の動きでテクニックを連携させる必要があります。
- バタフライガードの攻撃
- アームドラッグからのサブミッション
- Xガードの攻撃
- 片袖ガード
ハーフガード
ハーフガードは紫・茶帯のレベルになると、かなり楽しくなります。ほとんどの人がディープハーフガードに魅了されているようですが、それを試す絶好のタイミングでもあります。
また、このテクニックはとても過小評価されていると考えているのですが、茶帯レベルには二重絡みを使ったロックダウン・ハーフガードと、そのバリエーション攻撃のオプションが必要だと考えています。
- ディープハーフガード
- ロックダウン・ハーフガード
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3.トップゲーム
茶帯になるために習得しておいて欲しいのは、ガードパスやトップからのサブミッションとスムーズなトランジションです。
サイドコントロール、マウントポジション、ニーオンベリー、バック、亀といった主要なポジションの間をシームレスに移行して、相手を制圧する方法をマスターする必要があるということです。
サイドコントロール
サイドコントロールからは、相手を極めきるスキルが必要です。サブミッションが機能しない場合は、他のポジションに移行して選択肢を広げます。
プレッシャーの掛け方と重心の調整は、茶帯に求められる重要な要素のひとつです。サイドコントロールのバリエーションを増やすことで、それらを素早く展開できるようになります。クロスボディコントロールはその好例です。
- クロスボディコントロール
- サイドコントロールからのサブミッション
マウント
茶帯のレベルに達した人からマウントポジションを取られると、実質的に動くことができなくなります。その理由は、普通の人が使うものとは違うバリエーションをマウントゲームに取り入れているからです。
ローマウント、ハイマウント、Sマウント、ミドル、モンキーマウント、ギフトラップなどは必須のテクニックです。
- ミドルマウント
- モンキーマウント
- ギフトラップ
バックコントロール
茶帯レベルのバックコントロールは、振りほどくことが困難です。そして、コントロールだけではなく確実に極めることができます。
そうするためには、さまざまなバックアタックを組み合わせることが大切で、ツイスターやトラックポジションのようなバックコントロールに関連したポジションの選択肢もあると良いでしょう。
- バックアタックのコンビネーション
- ツイスター
- ボディトライアングル
ニーオンベリー
茶帯レベルにニーオンベリーで押さえ込まれたら、重いプレッシャーと軽やかなムーブで圧倒されるでしょう。
そうするためには、あらゆる角度から制圧する方法を学ぶことが必要で、より良いコントロールのため自分の膝を相手の腹以外の部位(首など)に移動させることもあります。
- ポジションを支配する
- ニー・オン・ネック
亀の攻撃
茶帯レベルであれば、亀になっている相手を攻略ことは問題ではありません。さまざまな亀を崩す方法を熟知していて、サブミッションのオプションも豊富に持っています。
クロックチョークからトラックまで紫帯の頃にすべてを試して、自分のスタイルにマッチしたサブミッションを見つけましょう。
- 亀へのサブミッション
- クロックチョーク
4. ガードパス
ガードパスでは、パスの主要な原理原則を把握する必要があります。ほとんどの選手がガードパスよりも、ガードの練習に重点を置いていることが多いのですが、そのガードリテンションを成功させる目的も兼ねてガードパスのドリルに取り組みます。そこにはアームトラップパス、側転パス、ボディロックパス、ディープハーフパスなども含まれます。
さらに、サブミッションを使ってガードパスができると良いでしょう。
- アームトラップパス
- サブミッションパス
- 側転パス
- ボディロックパス
- ディープハーフパス
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5. 立ち技
茶帯レベルであれば、相手をテイクダウンすることはバックチョークと同じくらい簡単なはずです。そういう意味で、茶帯と認める条件としてはさまざまなテイクダウンのバリエーションを持っていること、そしてそれらをどのように融合させるかを知っていることがあります。
柔道とサンボのテイクダウンをどのように融合させるかや、テイクダウン・引き込みに対するカウンターを熟知していることが重要です。テイクダウンがそのままサブミッションにつながるような練習もしておくべきです。
- ラペルテイクダウン
- カウンターガードプル
- ローシングルレッグ・テイクダウン
- しゃくりでのテイクダウンエントリー
- シザー・テイクダウン
- スナップダウン
- インサイド・トリップ・テイクダウン
- 柔道とレスリングのテイクダウンのコンビネーション
- テイクダウンのカウンター
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6. サブミッション
茶帯レベルのサブミッションでは「トップでもボトムでも極めができること」は必須です。
そのため紫帯では、足関節のポジションを活かした攻撃であったり、オモプラッタのような一般的なサブミッションからの連携や、キャッチレスリング、あまり知られていないようなサブミッションなども探求します。ヒールフック、マッスルスライサー、ネッククランクなどを学び始めるのにこれ以上のタイミングはありません。
そこで最も重要なことは、サブミッションを取り切るための思考を習得することです。
- トップからのレッグロック
- キムラロック
- オモプラッタからのサブミッション連携
- ショートチョーク(バックから)
- インバーテッド・アームバー
- 上腕二頭筋スライサー
- ニーバーとトーホールドのコンボ
- サブミッションカウンター
7. エスケープ
茶帯になると、エスケープよりもカウンターを取ることが多くなります。エスケープの際は自分のサブミッションで終わるか、少なくとも支配的なポジションを得ることを目指します。
サイドコントロール、マウントポジション、バック、ニーオンベリー、亀から支配的なポジションへエスケープする方法や、タートルガードなどの「あまり良くないポジション」から直接サブミッションする方法を知っておきましょう。
- サイドコントロール・ボトム(下からの三角絞め、リストロック)
- マウント・ボトム(アルカトラズエスケープ、マルセロエスケープ)
- バックコントロール・ボトム(ボトムフックエスケープ、カウンター、ウィークサイドエスケープ)
- タートルボトム(タートルガード)
- ニーオンベリー(レッグトラップエスケープ、カウンター)
まとめ
ディノさんの道場での「茶帯に必要なスキル」とは、自分のスタイルにフィットしたテクニックを選択して先鋭化できていて、全局面から必要最小限の動きで多彩な展開を作りだせるような感じ。かなり要求レベルが高めですね。
「茶帯レベルであれば、相手をテイクダウンすることはバックチョークと同じくらい簡単なはず」というあたりは、立ち技をあまり練習しない環境だと基準が厳しすぎるかなと思いました。
今回は、おもに「茶帯で必要となるスキル」についてまとめましたが、後編では「茶帯としてのマインドセットや取り組むべき練習内容」などについて紹介します。
プロフィール
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後編は、「マインドセット」や「練習内容」について
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