ブラジリアン柔術の紫帯になる条件とカリキュラム(後編)
紫帯への昇帯は、柔術界隈に「万年 青帯」という言葉があるくらい高いハードルなのですが、その基準は道場によって異なります。道場によってはある程度の実力がついたら早めに昇帯させるところもあれば、昇帯の基準が厳しくて試合で優勝する実力があってもなかなか帯が上がらないところもあったりします。
いったい紫帯とは、どのくらいの実力が必要なのでしょうか。
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※この記事は後編になります。紫帯になるために必要なテクニックなどがまとまっている前編はこちらです。
8. マインドセット
柔術の青帯は、メンタリティの観点でいうと非常に難しい時期です。この時期は、自分のエゴをコントロールする必要があります。これは肉体的なものよりも、試合に対する精神的なアプローチに大きく関係しています。紫帯の条件として攻守での柔軟な対応をする必要がありますが、これは青帯の選手が一番苦労するところです。
つまり、青帯の選手はディフェンスやエスケープが巧くなりすぎて、往々にして非常に消極的になってしまうのです。このタイプの試合にもメリットはありますが、上達するためには攻めることも必要です。特に上位の帯に対しては、安全な場所にだけに留まらず自分から攻めに出る姿勢が必要です。この特別なハードルを乗り越えることが、紫帯になるために求められる最大のマインドセットです。
大賀さんの「柔術上達論」は、柔術で上達する取り組み方や考え方にまで言及されていて、ものすごくオススメ。
9. セルフディフェンス
紫帯は打撃に対して冷静さと適応力を示し、効果的にテイクダウンや引き込みを行う能力を持つことが期待されます。セルフディフェンスの技術は上位の帯になっても磨くことが重要です。
- 打撃回避(グラウンドと立ち技)
- 素早いテイクダウン(グラウンドと立ち技)
- 立ち技とグラウンド・コントロール
10. ドリルとスパーリング
スパーリングに関して紫帯に必要なことは簡単です。相手を派手に転がしたり、過剰にテクニカルになろうとしたりせず、さまざまな帯や相手のスキルレベルにあわせて、スパーのやり方を少し変えることです。
青帯ではいろんなタイプのスパーリングを経験しますが、なかでもスロースパーはとても大切です。ゆっくりとスパーリングすることで、すべての動きがシンプルでスムーズになります。
また、ドリルについては取り組んでいる動きの全体像が見えるようなシナリオで設定したほうが良いです。特定ポジションでの限定スパーは、その強度と抵抗のレベルを試すチャンスでもあります。
それから、もうすぐ紫帯になるにあたり意識して欲しいのは、初心者・ケガをしている人・年配者・異性とのスパーリングでの力加減の調整です。紫帯になると、さまざまなタイプの練習相手に教えながらスパーリングすることがあります。その際に相手の体力やスキルレベルにあわせてスパーすることで、あなたとのスパーリングは練習相手にとっても非常に貴重な経験となります。
11. 行動
帯が上がるにつれて、周囲からのあなたの行動に対する期待値は上がりますが、紫帯では他の人のために手本を示すことになります。
初心者は常に自分の手の届くところにある帯を尊敬すると思ってください。つまり青帯は、白帯にとって最も信頼できる手本になることが多いです。ウォーミングアップからスパーリング、更衣室での振る舞いなど、道場でのあなたの行動は、彼らの行動にも影響します。紫帯になると、さらに多くの人に注目されるようになるでしょう。
紫帯は基礎クラスでコーチを手伝ったり、キッズクラスを担当したりなどで、柔術の指導を経験することもありますが、柔術において「教え方を知る」ことはとても重要なことです。
その他
最後に、柔術のいくつかの側面が紫帯の条件に該当します。試合に出場することが昇帯の条件ではないことは、すでにご存知の通りですが、多くの人が試合に挑戦します。おそらく可能な限り多くの対戦相手と戦うでしょう。その際には、ゲームプランを練る必要があり、それを実行するためのフィジカルも必要です。
試合
青帯としての試合では、「ゲームプランを持つこと」と「セコンドの声に耳を傾けること」の2つに集約されます。白帯の頃は、持っている僅かな武器を使って生き残ろうとすることがほとんどですが、青帯レベルではポジションごとにゲームプランが必要になります。その他にも、スクランブルやトランジションなど、さまざまな要素を考慮する必要があります。
コンディショニング
競技者の場合、白帯以降はコンディショニングが必須になります。特にアダルト部門では、筋力トレーニングよりも有酸素運動とコンディショニングに重点を置くべきです。紫帯になるとかなりの運動量が必要になりますし、コンディションもそれを反映させる必要があります。ただし、コンディショニング方法を選択する際は、それが本当に自分に必要かどうかを慎重に検討してください。
ノーギについて
少なくとも私のジムでは紫帯の必要条件の1つだと考えていることについて話します。人々は同意しないかもしれないですが、柔術の全体的な知識は誰にとっても必要だと思っていて、道着・ノーギ・護身術の全てがその役割を担っているということです。
道着がない状態でも練習することは、紫帯になりたいのであれば必須だと思います。ノーギでのグリップファイト、サブミッション、ポジションの詳細、エスケープなどを知っているということは、柔術の重要な側面です。これは道着の時とはかなり違うので、学ぶべきことが多いです。
道着とノーギのどちらか一方に集中するのは構わないですが、少なくとも初歩的な知識は必要です。そしてその知識は、その人の帯のランクにふさわしいものでなければなりません。
最後に
紫帯とは、「柔術の練習をしている人」から「柔術のライフスタイルを受け入れている人」への大きな転換点です。そのため、紫帯には様々なことが含まれていますが、その価値は十二分にあります。
上記の条件が紫帯になるための全てとは言い難いですが、誰にとっても普遍的なものになります。これらをすべて満たしていれば、いま腰にどんな帯を巻いていようが既に紫帯レベルだと思います。
まとめ
青帯で伸び悩んでいる人を観察していると、「こうなりたい」「ここを伸ばしたい」というような自分の柔術スタイルから逆算した中長期的な計画性が希薄で、無計画にテクニックをつまみ食いしては忘れるという負のループを何年も繰り返している感があります。
青帯は、白帯の頃に揃えた「知識のパーツ」を駆使しながら、自分の技術体系を拡張していく時期。黒帯とほぼ同等の知識量を持ちながら、その中で「自分が磨いていくべき展開や技術が見つかり始めた状態」が紫帯なのかなと思いました。
それにしてもディノさんのジムの基準、日本の一般的な道場の基準よりもかなり厳しめかな・・・(苦笑)
プロフィール
必須の技術を忘れないために
ブラジリアン柔術などの寝技の攻防で必須の技術の1つに「えび」というムーブがあります。えびのように身体を曲げ伸ばしして、下からのポジショニング調整に使うのですが、初心者はおろそかにしがち。
そんな基本ムーブを忘れないよう、普段から刺繍グッズを身につけるのはおすすめです!