インタビュー後編:毛利部慎佑さん(柔術家)〜モリベチャレンジ
自分らしく懸命に生きている人たちにフォーカスしたインタビューコンテンツ「My Best Of My Life」第5回のゲスト、毛利部慎佑選手の後編です。今回は強豪選手との試合のことや、ご自身の近況について語っていただきました。
プロフィール
毛利部 慎佑
1989年生まれ。柔術黒帯。知育体操教室インストラクターを経て現在、ジャンプファイトクラブ代表。そして、柔術YouTubeチャンネル「ジャンプファイトチャンネル」を運営。師匠は小野瀬龍也
主な戦績
JBJJF
・全日本柔術選手権 黒帯ライト級 優勝(2019〜2020年, 2022年)
※全日本選手権 青・紫・茶・黒帯 すべての帯で優勝
IBJJF
・世界柔術選手権 紫帯ライト級 3位(2016年)
・アジア柔術選手権 白・青・紫・茶帯 で優勝
試合のこと
白木アマゾン大輔選手との試合
2020年10月に日本初の無観客&生配信で行われたKIT.01にて白木アマゾン大輔選手と対戦。結果は延長ゴールデンスコアでの勝利でした。
アマゾンさんは想像通りすごく強かったです。試合のプランとしては投げ技を警戒して、投げからの腕十字みたいな展開にならないよう身長50cmくらいになった気持ちで低く構えていました。
8分で頑張って極めを狙いにいったのですが、アマゾンさんのグリップやベースが正確すぎて崩せませんでした。ゴールデンスコアの4分は一つのミスで終わりになってしまうし、逆にちょっとしたきっかけをつくれれば勝てるかもしれないので「邪念」がでないように気をつけながら集中しておりました。
引き込んだ時に一気に潰されたのでビックリしましたが、柿澤さんに「ベチャッて潰してきますよ」と聞いていたので想定内ではありました。IBJJFルールだと確実にアドバンテージが入っていました。
フラワースイープで返したあと10秒くらい抑えていたように感じていて「おかしいな?」と思ったのですが、後で見直したら普通に3秒でした。アマゾンさんが強すぎて時間の感覚がおかしくなっていたんだと思います。
毛利部選手「アマゾンさんとの試合の感想」
クレベル・コイケ選手との試合
RIZINへの参戦が期待されているクレベル・コイケ選手とは2019年の全日本選手権の決勝で対戦。結果は8-4での優勢勝ちでした。僕からしたら、かなりやらかした試合です。もうちょっと堅実にやれば良かったんですけど、無駄に動きすぎました。大戦争になっちゃって。。。
クレベル選手はいわゆる柔術レスリングがすごく強くて、猫みたいに柔らかい感じでした。ボンサイ柔術でサトシ・ソウザ選手と練習してることもあってか逃げる能力がすごく高くて、脱力が上手いです。ずっと攻めてくるし、逃げも正確。亀力というかボール力というか、そういう強さがありました。
イタロ・リンズ選手との試合
イタロ・リンズ選手とは2018年のソウルオープンで対戦。結果は十字絞めでの一本勝ちでした。私は全然知らなかったんですけど、イタロ選手は潜る系が強くて、それがけっこうヤバいなと思ってて。フィジカルスペースの大塚さんから事前に「めちゃくちゃ強いよ」と教えてもらいました。
イタロ選手は力はそんなに強くないんですけど、潜ってからのレスリングが強くてハーフガードが得意な選手でした。私は普段から大塚さんや嶋田さんなどの「ハーフ強い人間」とよく練習してたので、そういう感覚があったのが勝因です。一緒に練習してる人たちに感謝です。
強豪選手だったんで、珍しく両手を上げて喜んでます(笑)
イタロ・リンズ選手は、数々の国際大会で優勝している強豪選手です。ブラジルのリオ・デ・ジャネイロ生まれ。
引用元:BJJ Heroes
グチエリー・バルボーザ選手との試合
ヨーロピアン柔術選手権2020の一回戦でグチエリー・バルボーザ選手と対戦。結果はアドバンテージ差で判定負け。
この試合は完敗でした。相手はヨーロピアンとパンを茶帯で優勝してる強い選手だったのですが、ベリンボロが強かったので、ダブルガードはないなと。もし勝てるとしたら、デラヒーバを上手いことパスできればという感じだったのでしたが、私のパスガード力不足です。
あとは、私が組み手をミスするとニアパスでのアドバンテージを頻繁に狙ってきて、あまりリスクは負わずに勝ちに徹するゲーム性で完全に負けてしまいました。
柿澤選手との練習について
毎週一緒に練習しているダイヤモンドガードこと柿澤剛之さんが、「しんすけ先生との練習でボコボコにされた」とTwitterでよくツイートされている件について、ご本人に真相を聞いてみました。
しんすけ先生、柿澤選手をボコってる疑惑の真相
私もやられてますよ(笑)
柿澤さんって、足まわしが異常に速いじゃないですか。速いというか、「見聞色の覇気」もってるんですよ。こう来たから、次こう来るんでしょ?みたいな感じで予測して動いてくるので、こっちも「この足がくるの分かってるよ!」みたいな感じで、1つ1つ淡々と正しいタイミングで正確に対処してます。
逆に、あの堅いガードをどうやったら突破できるのかって思ってますよ。あと、試合の時とか柿澤さんもっと強いはずなのに「なんでもっとやんないんだろ?」って思ってます。試合になると攻撃力が弱まっちゃう気がします。実際はもっと強いです。
ジムをオープンしてから
2018年4月に、さいたま市北浦和の緑区に「ジャンプファイトクラブ」という会員制ブラジリアン柔術ジムをオープンしました。現在、会員さんは約70人くらい。北浦和駅から徒歩30分という立地(バスなら5分)もあって、ジムの周囲に住んでる方が多いですね。そのうち子供が6割くらい。
うちは体操も習えるのが特色なのですが、あくまでも柔術のトレーニングの一環なので単独のクラスはありません。体操をきっかけに柔術にも興味を持ってもらえればという思いもあります。
全日本王者が伝える「スパイダーガード専門店」の凄み
私は日曜15:00からの初心者クラスとフリースパーに参加したのですが、ラッキーなことに、この日のクラスのテーマは毛利部選手の得意技「オノセスイープ」でした。毛利部選手は元体操教室の先生ということもあってか、指導がとても分かりやすくて丁寧。準備運動の段階から、今回のテーマで必要となる身体操作の要素が入っていたので、スムーズにテクニックを理解できました。
クラスの参加者は白帯2名・青帯1名と、リディプスから出稽古のかた(青帯)と私。平日のほうが人は集まるそうです。皆さんスパイダーガードと三角絞めが巧くて、スパーリングでも強かったです。現役の全日本王者から直接テクニックを学べるというすごい環境。近所だったら絶対通ってますね。北浦和近郊の方が羨ましい!
さとさんについて
YouTube動画で受け手として登場する「さとさん」はリディプスの頃から一緒にやってて、ジム設立時に移籍してきてくれた一般の会員さんです。マネージャーって呼ぶと喜ぶのですが、経営のアドバイスをしてもらってる訳ではないです(笑)。試合の時など、仕事で休みをとって旅行がてら応援のために帯同してくれたりするのでとても助かってます。
今後どのような事をやっていきたいですか?
今後も引き続き、世界選手権の表彰台を目指します。
自分自身の強みはどこにあると思いますか?
柔術としての強みは、体操やってたからバランスがいいところですかね。あと上下感覚があるところとか。カポエラやってた選手が競技歴が短いのに活躍したりするじゃないですか。それに近いものがあるんじゃないかと思います。
大切にしていることはなんですか?
嫌いなことはやらない。あと、お金の流れに気をつける。
柔術ビギナーの方へメッセージ
最後に、ブラジリアン柔術をはじめたばかりのビギナーの方々へのメッセージをいただきました。
とにかく続けてください。続けることで景色が違ってくるので。せっかく柔術と出会ったのに上手くならないなどの理由で辞めてしまうのはもったいないです。悩むのも含めて楽しむのが1番だと思います。
あと、とりあえずXガードはやったほうがいいです。からだ全部を使って相手を止めるなんて柔術らしいじゃないですか。僕はあんまりやらないですけど・・・(笑)
毛利部 慎佑
まとめ
毛利部さんのことは、柿澤さんから「真面目で礼儀正しい人」とうかがっていたのですが、まさにその通りの方でした。柔術と出会えたことにすごく感謝していて、日常のスケジュールを聞いてみるとジムでの指導・出稽古・YouTube撮影/編集などで休みがないくらい多忙なはずなのに「今が人生でいちばん幸せです」とのこと。自称、永遠の17歳(笑)。
ジャンプファイトクラブは毛利部さんの冗談や軽妙なトークが飛び交う楽しい雰囲気で、とても居心地が良いジムです。教わったことや学んだことをしっかり練習して、また出稽古に伺いたいなと思いました。