教則動画レビュー:木部 亮 シングルレッグハーフガードシステム
「シングルレッグハーフ」は私が白帯の頃に初めて買った海外教則DVDに収録されていて得意になったのですが、自分の所属道場では誰も知らないとてもニッチな技術です。
今回は、そんな「シングルレッグハーフ」に関する木部 亮選手の教則動画がBJJチャンネルさんから発売されたので、収録内容についてレビューしてみました。
シングルレッグハーフとは
「シングルレッグハーフ」とは、片足タックルのように相手の片足をキャッチした状態でハーフガードに入るポジション。シッティングガードやリバースデラヒーバからの連携でエントリーしたり、引き込みからエントリーすることの多いポジションです。
このポジションからのスイープはとても強力で、日本人最強ハーフガーダーの岩崎 正寛さんも「ハーフガードのスイープを3つしか使えないとしたらこれを選ぶベスト3」という動画で第1位に挙げていました。
シングルレッグハーフの使い手として有名な選手
「シングルレッグハーフ」の使い手として有名なのは、世界柔術選手権などの数々の大会で優勝した実績を持つベルナルド・ファリア。それから、ファリアの練習パートナーであり世界柔術選手権準優勝の実績をもつレオナルド・サジオロなどがいます。
どちらも強烈なシングルレッグハーフの使い手として知られていますが、サジオロのスイープは試合でこの組手を作ったらほぼ相手を返してしまうほどの強さがあります。
日本語の教則動画はありがたい!
私は英語の教則動画や海外の試合映像で言葉ではなく動きから意図を汲み取って覚えたのですが、日本語でディテールを解説していただけるのは非常にありがたいです。
海外の教則動画のコンセプトを言葉で説明している部分はなかなか理解できず早送りしてしまいがちですが、やはり日本語の説明だと理解度が全く違います。
そしてこの教則動画、シングルレッグハーフの技術をこれほど日本語で包括的に分かりやすく説明できているのはすごいなと思いました。
収録内容(再生時間:1時間11分)
- イントロ
- 何故ハーフガードなのか
- シングルレッグハーフガードに対する2種類のパスガード
- 襟のとり方について 対角の襟をしっかり持ち肩を下げさせる
- 押さえておくべき基本姿勢① 抜けづらい脚の組み方
- 押さえておくべき基本姿勢② シングルレッグハーフガードの形
- 入り方① ハーフガードから アンダーフックの取り方→SLHG
- 入り方② 立ちから ラペル or アームドラッグからSLHG
- 入り方③ RDLRからシッティングガードに移行しSLHGエントリー
- スイープ① 相手が手をついたら バックに移行してスイープ
- スイープ② 相手が体重をあずけてきたら膝をつかせズボンを掴みスイープ
- スイープ③ 相手が足を前に伸ばし耐えてきたら膝を開き倒す
- 三方向のスイープまとめ
- バランスが良い相手への対応
- バックステップに対して① 頭を下げスイープ or 膝を浮かせてバック
- バックステップに対して② Xフックを作りフックスイープ
- バックステップに対して③ 鎖骨辺りを押しつつフックスイープ
- バックステップに対して④ 相手を強制的にガードに戻す
- 相手に立たれた時① 膝をかぶせて再度シングルレッグハーフへ
- 相手に立たれた時② シントゥシンガードを作りスイープ
- シントゥシンガードで前に圧をかけられた時は袖持ち巴スイープへ
- 相手がステップしてきた時の2種類の対応
- トラブル① 横に回られた時の戻し方 相手の下にもぐり込む
- トラブル② 袖をコントロールされた時
- トラブル③ vs クロスチョークされた時のカウンター
- トラブル④ vs カントチョークされた時のカウンター
Google検索で「シングルレッグハーフ」で検索すると木部選手のYouTube動画がたくさん出てきますが、今回の教則はそれらでは語られていないテクニックや技の細かな部分まで解説されています。
BJJチャンネルさんのインタビューによると木部選手は英語の勉強をしていて、海外の教則動画をリスニング力の強化も兼ねて見ることにハマっているらしく、ハーフガードに関しては「カイオ・テハ」や「ベルナルド・ファリア」の技術を参考にしたとのこと。
たしかに引き込みかたや、スイープする姿勢がとてもファリアっぽいです。かなり動きを研究されたのかなと思いました。
そのほかにも、「マルセロ・ガルシア」「マイキー・ムスメシ」「ジョン・ダナハー」「ラクラン・ジャイルズ」といった、ただテクニックを紹介するだけではなくコンセプトからしっかり教えてくれる教則動画が好きとのこと。
マイキー・ムスメシの教則は全部コンプリートしているくらい研究熱心で、最先端の教則を言語レベルで理解されているところに強みがあるように思います。
そういう嗜好性も相まって、技術的にとても細かい部分が丁寧に解説されています。それから、この教則だけで「相手がやってくること」「エントリー方法」「基本姿勢」「各種スイープ」「相手の反応への対処」「トラブル対応」がパッケージとしてまとまっているのはすごく良いです。
他の教則では不足していた部分がごっそりカバーされているように思いました。
学び易さを考慮したテロップ編集がいい感じ
BJJチャンネル吉永さんによる丁寧なテロップ編集で、レクチャー内容に全て字幕が入っていて映像だけでも学べるよう配慮されています。それから、とてもテンポよく進行するので鑑賞しやすいなと思いました。
あと、全てのチャプターの最後に要点をまとめたテキストがあって、映像と音声とテキストで理解するスタイルになっています。ユーザー視点で学び易さを考慮したこだわりのようなものを感じました。最近見た教則の中でもトップクラスで分かりやすいです。
販売方法はダウンロード形式のVimeo版とDVD・Blu-ray版があって、私はVimeo版にしたのですがDVD・Blu-ray版も予約受付中で4/12前後の発送になるようです。
まとめ
シングルレッグハーフは、私にとってはとても重要な技術だったりするのですが、多くの柔術愛好家にとっては「それって何??」というレベルの知名度ではないかと思います。
意図して使おうとしない限り、なかなかこのポジションになることはないと思うのですが、覚えておくと非常に強力な武器になります。以前に紹介したコヨーテハーフとポジションが似ていて連携可能なのでオススメです!
木部 亮選手が代表を務める格闘技ジム「スプラッシュ」は愛知県岡崎市にあるらしいのですが、機会があればぜひ直接いろいろ教わってみたいです。
プロフィール
ギロチンチョークの刺繍が人気です
「ギロチンチョーク」はブラジリアン柔術などの寝技の練習をしている人なら、誰でも1度は練習したことがありますよね。私も好きな極め技の1つです。