ブラジリアン柔術をやっている人が友達や家族にも勧めたくなる文化的な理由
過去にいろいろな武道や格闘技の練習に参加してきましたが、「これは家族にもおススメしたい」と思えたのはブラジリアン柔術が初めてでした。今回は、どうしてブラジリアン柔術をやっている人が友達や家族にも柔術を勧めたくなるのか、東洋と西洋の文化的な視点も含めて理由を考察してみました。
「突き放す」と「引き寄せる」という違い
そもそも人間の関係性において、「突き放してくる人」と「寄ってくる人」のどちらと親しくなりやすいか。それは言わずもがな「寄ってくる人」でしょう。組み技系の競技は、この相手を「引き寄せる動作」が圧倒的に多いです。
打撃系の競技だとパンチやキックで互いに「突き放し合う」攻防なのに対し、ブラジリアン柔術はお互い自分のほうへ「引き込み合う」という攻防。すごく近い距離で組み合いながら相手の力量を察して力を加減したり、試したいテクニックを察してわざと受けたりなどの気遣いに触れることも多いので、思いやりの気持ちや信頼関係が構築されやすいのかもしれません。
「引く」は東洋人が得意とする身体操作
「引く」という動作は東洋人が最も得意とする身体操作で、刃物の使い方も日本は引いて切り、西洋は押して切ります。歩き方にしても西洋の歩き方は地面を後ろ足で蹴って(押して)歩き、昔の日本人は前足で引いて歩いていたようです。これらは決して偶然ではないだろうと、うちの道場の先生から教えていただきました。
また、以下は千葉大学の教授でコミュニケーションに関しての研究をしている道場仲間の「間合い」に関する論文ですが、ここでいう「引き」のエネルギーに関して言及されているのでぜひご参照ください。
価格¥4,878
順位381,972位
著諏訪 正樹, 伝 康晴, 坂井田 瑠衣, ほか
編集諏訪 正樹
発行春秋社
発売日2020年2月21日
ちなみに、東洋的なファイトスポーツで代表的なものには柔道・柔術・合気道・空手・少林寺拳法・日本拳法などがあります。西洋的なものの代表はボクシング・キックボクシング・レスリングなど。東洋と西洋をまぜあわせたものには、サンボ・ジークンドーなどがあります。
東洋と西洋の文化の違いについて
仕事関係の調査で読んだ東洋と西洋の違いについての本にも、興味深いことが書いてあったので紹介したいと思います。
「柔軟さ」と「専門道具」
東洋文化で食事の時に使う「箸」は食べ物の形や大きさや質に応じて、挟む、挟み切る、つまむ、つつく、刺す、かき寄せる、かき集める、まぜる、こねる、と言う具合に実に多彩な働きをしてくれる。相手を選ばない柔軟さがある。
それに対して西洋の「ナイフとフォーク」はどうか。ナイフは切ることが、フォークはつき刺すことが専門のきわめて単純な食事道具である。戦闘用の武器を思わせるが、明らかに肉を食べるためのものだ。
日本語の心ーことばの原風景をたずねて より引用
このように、西洋はナイフやフォークで食べ物をやっつける文化。それに対して東洋は箸や海苔などで食べ物を包みこむという文化という違い。
西洋的なパンチやキックは突き放すことがベースなので対立を生みやすく、東洋的な組み技は引き寄せることが基本にあるので仲良くなりやすいと言えます。
東洋には相手を選ばない柔軟さや寛容さ。西洋には道具としての専門性という特徴があります。
「相手が主体」と「自分が主体」
箸系のものは、相手のほうへ主体をおいて、自分が相手に合わせていこうとする。それに対してナイフ・フォーク系のものは、自分のほうへ主体をおいて、相手に合わせさせようとする。そこに東洋と西洋の発想の違いがあると言えそうだが、風呂敷・下駄・着物は日本に固有なものである。やはり、何にでも通じる自由さ、融通無碍さの文化では、日本が最も豊かなのである。
日本語の心ーことばの原風景をたずねて より引用
極めて東洋的な思想で考案された風呂敷きや着物は、「包む対象の大きさ」に道具が形をフィットさせるという柔軟な思想で作られています。厳密にS/M/L/LLなどのサイズ規格があるわけではなく、「だいたいこのくらいの大きさまでなら使えますよ」というおおらかさ。多少荷物が増えても、体重が増えても対応できてしまう。それは、豊かさとも言えます。
自分が相手に合わせていこうとする人(東洋的)と、相手に合わせさせようとする人(西洋的)、どちらと仲良くなりやすいか。絆が生まれやすいか。結論は言うまでもないと思います。
また、東洋の「自分と相手を結びつける」文化は、ブラジリアン柔術でも相手と自分をグリップしたりホールドしたりして結びつける動きと関係があるかもしれません。
価格¥2,600
順位86,687位
著大賀 幹夫
発行日貿出版社
発売日2022年7月16日
まとめ
組み技は相手との距離が近く、特に寝技が主体となる柔術ではトップポジション・サイドポジション・バックなどからホールドして相手との距離がほぼ0になる密着した状態になりがちです。それは、心理学的にいうとパーソナル・スペースにおける親密距離(0~45cm)にあり、それも良い人間関係が作りやすくなる要因の1つかもしれません。
ブラジリアン柔術の道場は私の知る限り、どこへ行ってもフレンドリーで居心地が良くて、「何か運動したい」「痩せたい」などと悩んでいる友人や家族にぜひお勧めしたくなるというのは、以上の理由があるからではないでしょうか。
余談ですが、スクラムやタックルなど組み合いの要素が多い「ラグビー」出身の人は、仲間同士の絆が強く、仲間のために懸命になれる人材が多い気がします。
また、そんな親密距離になるからこそ、自分本位な練習で相手にケガをさせたり、不快な思いにさせるような行動はなるべく慎みたいですね。これは自戒も込めて言いますが、マナーが守れない人は自然と練習相手から遠ざけられたり、その場所に居づらくなってしまいますよ〜!
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